小規模宅地等の特例とは?具体的な要件と計算例をご紹介
亡くなられた方(被相続人)が住んでいた土地又は事業を行っていた土地を相続する際、相続税がかかることがあります。そして相続税の額によっては、相続税を払うため相続人がその土地を売却せざるを得ないことがあります。
そのようなことを防ぐために考えられた制度が「小規模宅地等の特例」です。相続税において節税効果が非常に大きい特例になりますので、今回は小規模宅地等の特例についてわかりやすく解説します。
小規模宅地等の特例とは
「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が住んでいた自宅の土地や事業用に使っていた土地に関して、条件を満たした場合、評価額を減額できる制度です。
前提条件として相続開始直前において、「被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等」である必要があります。
同一生計親族とは、被相続人と生活を共にしていた親族をいいます。つまり、被相続人と同居していた配偶者や子供などのことです。また、同居をせず、別々に生活をしていても、生活費等の仕送りなどが行われていた場合には該当します。
さらに、宅地等が建物などの敷地であることが条件になります。事業用として使用していても青空駐車場のような使い方では該当しません。
小規模宅地等の特例が使える土地の種類
小規模宅地等の特例が使える土地は大きく「特定居住用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」「特定事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」の4つのパターンに分けられます。
今回は、「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」の3つについて詳しく解説していきます。
1.特定居住用宅地:住宅として使っていた土地
被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族が住宅として使っていた土地のことです。
●適用要件(3つの要件のうち1つに当てはまる必要があります)
・被相続人の配偶者が土地を相続する場合
・被相続人と同居していた人が土地を相続する場合
※被相続人と同居していた親族の場合は、自宅を相続税の申告期限まで所有し続け、かつ、住み続けることが条件になります。
・被相続人に配偶者も同居人もいない場合(家なき子)
※配偶者も同居している親族もいない場合、つまり被相続人が独居していた場合に限り、実家を出て同居していない親族でも小規模宅地等の特例が適用される可能性があります。これを相続税の世界では「家なき子特例」と言いますが、以下の要件を全て満たさなければいけません。
①被相続者に配偶者及び同居親族がいないこと
②相続開始時に住んでいる家屋を過去に所有したことがないこと
③宅地を相続した親族は相続開始前3年以内に、自分又は自分の配偶者、3親等以内の親族、特別の関係がある法人の所有家屋に住んでいないこと
※①~③について
細かい条件がありますが、要約しますと「持ち家ではなく賃貸物件に住んでいる親族」であることが条件になります。
④相続した宅地を相続税の申告期限まで引き続き所有していること
●減額率と適用面積
減額割合は「80%」で、適用される面積は最大「330㎡」までとなります。
2.特定事業用宅地:事業で使っていた土地
被相続人などが事業を営んでいた土地に関しては「特定事業用宅地等」に該当し、小規模宅地等の特例の対象となるケースがあります。対象となる事業から不動産貸付業等は除かれます。(不動産貸付業は、後述3に該当する可能性があります。)
●適用要件
1:相続開始前から被相続人又は同一生計親族がその土地で事業を営んでいること
※同一生計親族の事業の用に供されていた宅地等をその同一生計親族本人が取得するケース。
2:相続税の申告期限まで宅地等を所有し、事業を継続していること
●減額率と適用面積
減額割合は「80%」で、適用される面積は最大「400㎡」までとなります。
※特定事業用宅地の注意点1
平成30年度の税制改正によって、相続開始前3年以内に該当の土地が新たに事業用として使われた場合は小規模宅地等の特例の対象外となりました。ただし、このような「3年以内事業宅地等」においても、宅地等の上の事業に使われている減価償却資産の価額が土地の価額の15%以上である場合、小規模宅地等の特例は適用されます。
※特定事業用宅地の注意点2
親族が会社を運営していて、建物が法人名義の場合などは特定事業用宅地になりません。その場合は「特定同族会社事業用宅地」という区分に該当することがあり、条件が特定事業用宅地等と異なるので注意が必要です。
3.貸付事業用宅地:賃貸していた土地
貸付事業用宅地等とは、相続開始直前に貸付事業用(賃貸アパート、賃貸マンション、貸し駐車場業など)に利用されている土地のことです。
●適用要件
1:相続開始前からその土地で貸付事業などを行っていること
2:相続人が相続税の申告終了まで、その宅地等で不動産貸付業を続けている
●減額率と適用面積
減額割合は「50%」で、適用される面積は最大「200㎡」までとなります。
※貸付事業用宅地の注意点
平成30年度の税制改正によって、該当の土地が相続開始前3年以内に新たに不動産貸付業用として使われた場合は小規模宅地等の特例の対象外となりました。
ただし、このような「3年以内貸付事業宅地等」においても、被相続人が相続開始の3年より前から貸付事業を事業的規模で行っていて、新たに相続開始前の3年以内に貸付事業を始めた宅地については小規模宅地等の特例の適用対象です。つまり、元々不動産貸付業を営んでいた方が3年以内に規模を拡大した場合は、その土地についても対象となります。
小規模宅地等の特例を適用する場合の計算例(居住用宅地の場合)
小規模宅地等の特例を用いれば効果的に相続税を減額することが可能です。具体的に特定居住用宅地等を例に計算してみましょう。
例:自宅の敷地が1㎡当たり35万円で、300㎡の場合
35万円×300㎡=1億500万円【土地の評価額】
35万円×300㎡×80%=8,400万円【小規模宅地等の特例による減額】
つまり、小規模宅地等の特例を利用すれば土地の評価額が8,400万円も減額されるのです。
まとめ
小規模宅地等の特例を活用すれば、都市部など土地の高いエリアにおいては、効果的に相続税が減額できます。しかし、小規模宅地等の特例を適用するには条件があります。二世帯住宅だったり、被相続人が老人ホームに入っていたりすると更に条件が複雑になります。
当事務所では、土地の用途や状況に応じて、どのような相続対策ができるのかを丁寧にお調べして、効果的な相続のサポートをいたします。